高血圧とは?

高血圧イメージ

高血圧は文字通り血圧の値が高くなっている状態です。日本の高血圧患者数は約4300万人と推定され、そのうちの約30%が治療中にもかかわらずコントロール不良、約40%が未治療で経過していると言われています。血圧が高いということだけでは自覚症状はほぼありません。しかし、血圧が高いことを放置していると心臓疾患(心筋梗塞・心不全)や脳卒中(脳梗塞・脳出血)、慢性腎臓病・腎不全になる危険性があります。

かつて脳卒中による死亡率が高かった日本は1960年代頃から低下傾向となり現在のような世界でもトップレベルの長寿国となりました。それには降圧薬による高血圧治療の進歩や健診や指導の普及、生活環境・習慣の変化など、国民全体の血圧平均値が低下していることが関与していると言われています。

日本人の高血圧の特徴は以前から食塩の過剰摂取と言われています。1990年代は日本人の平均食塩摂取量は11-13gと言われていましたが2016年の調査では10g程度まで摂取量を減らすことができていますが、世界保健機関(WHO)のガイドラインでは食塩摂取量5g未満と記されておりまだ日本の現状とはほど遠いものとなっています。最近は、欧米のように肥満を伴う高血圧患者も増えており、高血圧だけでなく糖尿病や高脂血症などを合併している例も少なくありません。

高血圧と診断するには?

2019年 高血圧ガイドラインから抜粋
収縮期血圧
(上の血圧)
拡張期血圧
(下の血圧)
診察室血圧 ≧140 ≧90
家庭血圧 ≧135 ≧85

診察室での血圧測定で収縮期血圧、拡張期血圧のどちらか一方でも140/90mmHg以上あれば、また自宅での血圧で収縮期血圧、拡張期血圧のどちらか一方でも135/85mmHg以上であれば高血圧と診断されます。診察室血圧と家庭血圧に差がある場合は、家庭血圧を指標とし実際に家庭血圧を指標にして血圧をコントロールすることで脳心血管の死亡率を低下させると報告されています(Circulation, 2014)。

そのため当院でもガイドラインで示されている下記の正しい家庭血圧測定を推奨しています。

お勧めする家庭血圧測定方法
  1. ① 起床後1時間以内、排尿後、朝食前、朝の服薬前、および寝る前
  2. ② 座って1、2分安静にした後に測定
  3. ③ 原則測定するのは2回まで

血圧の値は、私達は気づいていないだけで常に変動しています。
精神的ストレスや不眠、過度の塩分摂取や気候や気温などは血圧が上昇するリスク因子となります。1回測定した値で一喜一憂するのではなく測定した血圧の平均値を比較することをお勧めします。当院では、血圧手帳に記載して頂き診察ごとにチェックさせて頂きます。

高血圧の検査は?

不摂生な生活習慣が原因でなる高血圧を「本態性高血圧」と呼び、高血圧の中の90%前後を占めます。脂肪分の多い肉や揚げ物が好きな方、味の濃い(塩分の多い)食事を好まれる方などの食生活が原因となることや、デスクワークが多く、定期的な運動を行っていない場合も、高血圧を引き起こす要因となります。さらに、精神的なストレス、過剰な飲酒、喫煙などもリスク因子と言われています。また、ホルモンや腎臓の異常、睡眠時無呼吸症候群などが原因で血圧上昇を引き起こす二次性高血圧と言われる高血圧もあります。高血圧患者全体の10%程度を占めると言われており原疾患を治療することで高血圧を是正することができます。

高血圧がどの程度体に影響を及ぼしているか、高血圧の治療を行う前に合併症などがないかを評価します。二次性高血圧の原因となるホルモンや腎臓の異常、睡眠時無呼吸症候群が隠れていないかも評価します。当院では、血液検査、尿検査、12誘導心電図、腹部超音波検査、心臓超音波検査、終夜睡眠ポリグラフ検査などで評価いたします。その結果、二次性高血圧が疑われた場合は大学病院などの専門病院へ紹介が必要となります。

高血圧の治療は?

高血圧の治療には、大きく分けて非薬物療法と薬物療法に分けられます。
高血圧治療の基本となる非薬物療法としては、減塩を中心とした食事療法や運動、アルコール制限、禁煙、肥満の改善が含まれ、それぞれ目標値は以下になります。

  • 塩分摂取量:6g/日未満
  • 有酸素運動を毎日40-60分以上
  • 節酒(ビール中瓶1本程度)
  • 禁煙
  • 適正体重に減量する

生活習慣を是正した後も目標血圧値に達しない場合や、すでに高血圧により体への影響が出ている場合は薬物療法を行います。降圧薬には様々な種類の薬があるため、患者さんの既往歴や状態それぞれに合わせた適切な薬剤を検討し処方します。急激な降圧は、脳卒中の危険があるため基本的には緩徐に降圧を行い、測定して頂いた家庭血圧の記録と合わせて調節していきます。